立ち入り規制から引率入場へ
自然研究路は2015年5月、火山活動の活発化に伴って立ち入りが規制された。同年6月には大涌谷周辺でごく小規模な水蒸気噴火が発生した。その後、安全対策が進められ、2022年3月28日に事前予約制の引率入場として再開した。[4][6]
2026年3月28日、私は芦ノ湖と大涌谷を訪れた。
湖面と山並み、そして白い噴気が立ち上る斜面。
帰宅後、現地で撮影した写真と研究資料を比較し、二つの景色の成り立ちを調べた。
元箱根港から乗った船の上からは、湖面と周囲の山並みが見渡せた。一方、大涌谷では岩や地肌が広く露出し、斜面のあちこちから白い噴気が立ち上っていた。
帰宅後に現地の写真を振り返る中で、同じ箱根火山の地域にありながら、なぜこれほど異なる景色が見られるのだろうかと考えた。そこで、地形の歴史と地下の熱水系について研究資料を調べることにした。
私は、写真から確認できること、研究資料による説明、自分自身の考察を区別して整理した。
2026年3月28日は、箱根海賊船と箱根ロープウェイを利用して、芦ノ湖から大涌谷へ移動した。
大涌谷では、自由な立ち入りが制限されている自然研究路を「引率入場」で見学した。引率入場は事前予約制で、ヘルメットを着用し、安全確保のための監視員の誘導に従って団体行動する仕組みになっている。[4・5]
実際の見学では、監視員の引率のもとで噴気地帯を間近に歩き、地学的な解説も受けた。監視員は安全確保のための誘導員であり、一般的な観光ガイドとは役割が異なる。[5] 観察した事実と、研究資料からわかったことを分けて本文にまとめている。
湖面と山並みから考える、
過去に起きた大きな地形の変化。
船上で撮影した写真には、広い湖面と周囲の山の斜面が写っている。湖岸には赤い鳥居が見え、周辺には森林が広がっていた。
ただし、現在の景色だけから、湖がいつ、どのように形成されたのかを確かめることはできない。
写真はすべて2026年3月28日に撮影。以下の形成過程は現地写真ではなく、研究資料に基づく説明である。
約3,000年前、水蒸気爆発に伴い山体が崩れる
大量の岩石や土砂が流れ下る
流路が塞がれ、上流側に水がたまる
せき止められた水が湖となる
白い噴気が立ち上る斜面には、
今も続く地下の熱の働きが現れている。
大涌谷では、白色や赤茶色の地肌が広く露出し、複数の場所から白い噴気が上がっていた。地面には大小の石があり、溝状に見える地形も確認できた。
ただし、写真だけでは気体の成分や温度、溝状の地形ができた原因は断定できない。
神奈川県温泉地学研究所の研究によると、大涌谷の地下には、火山由来の熱やガスと地下水が関係する複雑な熱水系が存在している。調査では地下の蒸気の通り道と考えられる領域が示され、地表の噴気や温泉との関係が調べられている。[2]
水蒸気そのものは無色透明だが、噴出後に外気で冷やされると細かい水滴になり、白く見える。このため、目に見える白い噴気は、主に水蒸気が凝結してできた微小な水滴と考えられる。
大涌谷の地表には熱水や火山ガスの作用を受ける場所があり、岩石の変質や植生の乏しい景観に関係すると考えられる。ただし、写真の特定の岩石や溝の成因まで判断するには、追加の観測が必要である。[2]
大涌谷の熱は温泉や黒たまごづくりに使われる。
その一方で、火山ガスや噴石への備えが欠かせない。
大涌谷などの噴気地帯では、地中から噴き出す蒸気と地下水を利用して温泉を造成し、仙石原や強羅などに供給している。こうした温泉は「蒸気造成温泉」と呼ばれる。[3]
名物の黒たまごは、自然研究路内の温泉池で卵をゆで、さらに蒸して作られる。完成した黒たまごは専用の運搬用ロープウェイで下の売店に運ばれる。[8]
黒い殻は「硫化鉄が付着するため」と説明されてきた。しかし、2023年に発表された分析研究では、殻の黒色物質に無機成分が少なく、タンパク質様の有機物が多く含まれることが示された。研究では、メイラード反応(褐変反応)や、硫黄が関係する反応によって黒色物質が生じる可能性が考察されている。従来説だけでは説明できない点があり、詳しい生成過程は研究の対象となっている。[9]
訪問時、自然研究路内の黒玉子茶屋には「販売休止中」の案内があった。茶屋での直接販売と、下の売店での販売は区別する必要がある。
自然研究路は2015年5月、火山活動の活発化に伴って立ち入りが規制された。同年6月には大涌谷周辺でごく小規模な水蒸気噴火が発生した。その後、安全対策が進められ、2022年3月28日に事前予約制の引率入場として再開した。[4][6]
自然研究路には、最大30cmの噴石の飛来に耐えるシェルターが7か所、平均約100m間隔で設置されている。ガスマスクなどの備品が配備され、火山ガスの24時間計測と監視員による監視も行われている。[4・5]
探究の問い「芦ノ湖と大涌谷の景色は、箱根火山の過去と現在の活動をどのように伝えているのか」について、現地の観察と研究資料を比べて考えた。
約3,000年前の神山の山体崩壊が川をせき止め、湖が形成された。現在の穏やかな湖面は、その後も残る地形変化の結果と捉えられる。
斜面から立ち上る噴気は、地下の熱水系から熱や流体が地表へ供給されていることを示している。活動が続く火山の一面を見せる景観である。
芦ノ湖と大涌谷は一見対照的だが、どちらも箱根火山の活動が生んだ景観であり、現在の観光や地域の暮らしに結びついている。大涌谷では、地熱の利用と同時に、噴石や火山ガスへの安全対策が行われている。
二つの場所を比べると、火山活動は過去の出来事として地形に残る一方、現在も地下の熱やガスの働きとして現れていることがわかる。
今回の野外観察と資料調査から、芦ノ湖は「過去の地形形成」を、大涌谷は「現在の熱水活動」を考える手がかりになるとわかった。火山の活動は景観をつくり、地域で利用される資源をもたらす一方で、防災対策を必要とする。
ただし、今回の観察は2026年3月28日の一時点の記録であり、地温やガス濃度、地下の圧力を測定したものではない。
湖や溝状の地形の形成過程は、写真だけではわからない。地質調査や堆積物の分析に基づく研究資料との照合が必要である。
白い噴気の勢いだけで温度、ガス濃度、地下の圧力変化は判断できない。火山の状態を理解するには、観測機器による定量的なデータが必要である。
現地では、岩の表面に地衣類のような付着物が見られ、近くから写真を撮影した。赤い点状の部分も確認できるが、写真だけで生物種や環境への適応を断定することはできない。正確な同定には専門的な調査が必要である。
地形の形成過程、熱水系、利用と安全対策の説明について、以下の資料を参照した。
現地写真は2026年3月28日に撮影。本文中の観察内容は撮影当時の記録です。